草トーナメントに初めて参加するとき、多くの人が「緊張で実力を出せるだろうか」と不安になります。しかし、適度な緊張は集中力やパフォーマンスを高めるポジティブな要素であることが知られています。本コラムでは、緊張を味方につけるためのメンタル術を7つ紹介します。日頃の練習や試合直前・試合中に取り入れられる簡単なトレーニングばかりですので、ぜひ実践してみてください。
1. 緊張は味方と捉える
「緊張=悪いこと」と思いがちですが、緊張は誰にでも起こる自然な反応であり、適度な緊張は集中力を高める効果があります。トップアスリートでも試合前は緊張すると語っており、むしろ緊張をエネルギーに変える意識が大切です。試合前に「今は大事な場面だから体が反応している」と自分に言い聞かせることで、緊張を前向きに捉えましょう。
2. 意識の矢印を自分に向ける
試合に臨むとき、周りの目や相手の評価を気にすると緊張が増します。メンタルトレーナーは「意識の矢印を自分➡相手ではなく、自分自身に向ける」ことの重要性を強調しています。周囲の評価はコントロールできませんが、あなたがやるべきことは目の前のプレーに集中すること。試合前に「自分はこの試合で何をしたいのか」「どんなプレーを見せたいのか」を明確にし、矢印を自分の内側に向けておきましょう。
3. ハードルを下げてOKラインを設定する
初試合で完璧なプレーを目指すと緊張が高まってしまいます。メンタルトレーニングの現場では、あらかじめ自分の中に「これができたらOK」というラインを低く設定しておくことを勧めています。例えばテニスなら「最後まで走り切る」「声を絶やさない」といった、努力次第で達成できる目標を掲げると、自信を失うことなくプレーを続けることができます。小さな成功体験を積み重ねることで自信が生まれ、緊張も自然と軽減していきます。
4. 深呼吸と腹式呼吸で心身を整える
緊張すると呼吸が浅くなり心拍数が上がりがちです。試合直前やプレー中に腹式呼吸を行うことで副交感神経が働き、心身をリラックスさせる効果があります。方法は簡単。鼻または口から5秒かけて息を吸い、お腹を膨らませながら空気を入れ、次に口から5~7秒かけてゆっくり息を吐き切ります。吸うときよりも吐く時間を長めにすることがポイントです。試合前はもちろん、ポイント間の数秒でもこの呼吸を取り入れると、気持ちが落ち着き視野が広がります。
5. 筋弛緩法で体の力みを取る
緊張すると身体が固まって動きがギクシャクします。その際は、全身の筋肉を一度ギュッと力いっぱい緊張させてからストンと力を抜く「筋弛緩法」が効果的です。例えば握りこぶしを作って数秒間力を入れたあと一気に力を抜く、肩をすくめて力を入れたあと息を吐きながら脱力するといった簡単な動作を繰り返します。一度思い切り力を入れてから脱力することで余計な力みが取り除かれ、肩の力が自然と落ちてリラックスしやすくなります。
6. 試合前ルーティンとイメージトレーニング
毎回同じ手順でアップや準備を行う「試合前ルーティン」には、心を落ち着け緊張をコントロールする効果があります。例えば試合前に必ず深呼吸とストレッチを行うなど自分なりの流れを作ると安心感につながります。トップ選手の中には試合当日必ず同じ食事や音楽を取り入れて心を整える人もいます。
また、試合前日のイメージトレーニングも非常に有効です。自分が会場に立ち、どんなプレーをするかを頭の中で細かくシミュレーションします。ミスをした場面やピンチになった場面を想定し、どう乗り越えるかまでイメージしておくと「もしそうなっても対応できる」という安心感が生まれます。良いイメージを持つために、過去に成功したプレーや練習で上手くいったシーンを思い出しておくのも効果的です。脳は現実とイメージの区別がつきにくいため、頭の中で何度も成功体験を積むことで実際の試合でも自信を持ちやすくなります。
7. 試合中のリセットとポジティブセルフトーク
試合が始まると緊張に加えてミスや予期せぬ展開が重なり、心が乱れがちです。そんなときは、プレー間に必ず自分のルーティンを入れ、ミスを引きずらないよう気持ちをリセットすることが大切です。例えばテニスならサーブ前に必ずボールを3回突き深呼吸をする、バドミントンならサーブ前にグリップを持ち直す動作を入れるなど、短時間でできるルーティンを実践しましょう。
また、自分に対する声掛け(セルフトーク)もポイントです。ネガティブな言葉は緊張を増幅させますが、ポジティブな言葉は自信を高めてくれます。ミスをしたら「大丈夫、次で取り返せる」「今は練習通りに落ち着いていこう」と自分に声をかけましょう。仲間がいるスポーツでは「次行こう」「ナイスプレー」と声を掛け合うことでチーム全体の雰囲気も良くなり、緊張を和らげる効果があります。
そして、試合中は常に「今このプレーに集中する」ことを心掛けてください。過去のミスや未来の結果を考え出すと緊張や焦りにつながります。目の前の一球に全力で取り組み、ポイントが終わったらルーティンでリセットし、再び次のプレーに集中する—このサイクルを繰り返すことが、試合で力を発揮する鍵です。
まとめ
初試合で緊張しないためには、緊張を「悪」だと捉えず味方にすることから始め、自分がコントロールできる範囲に意識を向けることが大切です。過度な期待を背負い込まず、OKラインを設定して成功体験を積み重ねましょう。深呼吸や筋弛緩法、試合前のルーティンやイメージトレーニングを日頃から実践しておけば、試合当日も心を落ち着けてプレーできます。試合中はルーティンとポジティブセルフトークで気持ちをリセットし、常に次のプレーに集中することが重要です。緊張と上手に付き合いながら、初めての草トーナメントを存分に楽しんでください。
